低出生体重児の粘膜バリヤー機能を向上させるため、n-3系PUFAおよびプロバイオティクスの投与が及ぼす影響を検討した。 まず、授乳ラットおよび授乳婦に、DHA強化食あるいはDHAカプセルを投与し、児の脂肪酸組成に及ぼす影響を検討した。DHAの強化により母乳中DHA濃度および児の組織中n-3系PUFA値が有意に上昇することが認められ、これらによって未熟児・新生児における腸管粘膜バリヤー機能に影響を及ぼす可能性が示唆された。 次に、出生直後の仔ラットにプロバイオティクスであるB.breveを投与した際の消化管粘膜における炎症性シグナル分子の発現をマイクロアレイを用いて検討した。出生直後から2週間、継続的にB.breveを投与した群においてlipoprotein lipase、glutathione peroxidase 2、lipopolysaccharide binding proteinなどのシグナル伝達分子の発現が抑制されることを確認し、プロバイオティクスが持つ抗炎症効果ならびにバリヤー機能保護作用を説明するものと思われた。 最後に、bacterial translocationの的確な診断のため、血中および便中細菌検索を定量的RT-PCR法を用いて行い、微量のサンプルにて高感度に各種細菌の同定が可能である測定法を確立した。本法を用いて低出生体重児ではこれまで培養検査では同定されなかった腸内細菌群によって、容易に菌血症・敗血症を起こすことが明らかになり、消化管粘膜バリヤー機能の重要性が示唆された。
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