脳機能検査において、侵襲性、機器の移動性、時間分解能、再現性、経費等で、それぞれ長所、短所があり、脳機能を解明していくにはいくつかの機器を組み合わせた同時計測が必要である。昨年度、申請した科学研究費により、多面的高次脳計測システムを構築した。課題関連脳血流動態と事象関連電位の同時測定を行い、血流活性部位の同定も含め事象関連電位のLORETA解析をおこなっている。事象関連電位の測定には、オドボール課題(目的刺激:赤ん坊の泣き顔または笑い顔、非目的刺激:赤ん坊の中性の顔)を用いた。NIRSによる測定は、60秒の課題時と60秒の間隔で4回および1秒の課題時と3秒の間隔をもうけ30回の加算を行い平均加算血流動態と同時にP300成分を解析した。脳血流は、左右22チャネル(合計44チャネル)から記録した。健常ボランティアでは、課題遂行時には、左前部、左中間部の脳血流(酸化ヘモグロビン量)が増大した。LORETA解析では、左前頭極(ブロードマン10野)、左前頭葉部(46野)の活性が得られた。「泣き顔」刺激のほうが「笑い顔」刺激より、脳血流の増大は大きかった。しかし、統合失調症群では、左前部、左中間部の脳血流増大は観察されず、LORETA解析においても左前頭極、左前頭葉部の有意な神経活性も観察されなかった。また、NIRSと眼球運動計測の同時記録・解析においては、健常ボランティアでは、「泣き顔」条件が「笑い顔」条件より脳血流(酸化ヘモグロビン量)および、眼球運動の総移動距離が増大したが、統合失調症群では、「笑い」顔条件が「泣き顔」条件より脳血流(酸化ヘモグロビン量)は増加した。以上の研究は、以下に示すように学会発表も行っており、論文発表も作成中である。さらに、健常ボランティアにおいて、課題遂行時の被験者にリアルタイムで脳血流動態が評価でき、同時に脳波(事象関連電位)および探索眼球運動計測が可能解析装置を構築してゆく。
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