研究概要 |
脳死症例における脳幹機能の評価を電気生理学的にするにはABR,SSEP検査が必須であるが、それらの電極を工夫することで、脳幹機能をより的確に把握することが可能である。脳死判定においてもABRにおいては導出する電極のモンタージュは通常検査の場合と同様である。一方、脳死症例の脳幹機能を検査するためのSSEPのモンタージュに関しては一定の方式がないのが現状だが、我々が開発したモンタージュ法は脳幹下部、すなわち呼吸中枢に隣接した延髄楔状核の機能をN18として把握できる。SSEPは日本光電製Neuropach Σを使用し、測定感度10μ V/div、フィルタ帯域5~2000Hz、加算回数1000回、刺激頻度5Hzで左右の正中神経を刺激して測定する。電極はP9、P13、N18、N20が同定しやすいようにCPc(左刺激ではC4とP4の中間、右刺激ではC3とP3の中間)、Cpi(CPcの対側)、Fz、REF(刺激対側のErb点)、C2s(第2頸椎棘突起上)、A1を選択し、モンタージュは第1チャンネルをFz-CPc、第2チャンネルをCPc-REF、第3チャンネルをAi-CPi、第4チャンネルをCPi-C2sとした。これまでの研究でABRとSSEPは互いに補完し合う誘発電位検査であることが明らかになった。さらにN18に加え、P13,ABRのIII波に注目し脳死例、非脳死例で評価を行った。 以上より、脳死症例における電気生理学的脳幹機能の評価に際して、SSEP検査はABR検査を補完するばかりでなく、下部脳幹機能を評価することが可能で、極めて有用であり、無呼吸試験をも保管する可能性があると考えられた。
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