肺癌術後再発の1つのメカニズムとして、手術操作による原発巣からの腫瘍細胞遊離→肺静脈から循環血液中への放出が考えられるが、これを実証することが困難であった。今回我々は、循環血液中腫瘍細胞(CTC)検出システム"CellSearch"を用いて検証した。連続30例の肺癌に対する肺葉切除術症例において術前末梢血中CTCおよび摘出直後の肺静脈血中CTCを測定した。術前末梢血中CTC陽性例は30例中5例(16.7%、CTC細胞数は1、1、2、3、16)で、腺癌よりも扁平上皮癌で有意に高かった(p=0.028)。肺静脈血中CTCは30例中29例(96.7%、CTC細胞数は平均1195、中央値81)であった。術前末梢血中CTCと肺静脈血中CTCの値に有意な相関関係を認めなかった。以上の結果から、肺癌手術においてほぼ全例で腫瘍細胞が循環血液中に放出されていることが明らかになった。このことは今後の手術術式(肺動脈処理より肺静脈処理を優先させる、など)に大きなインパクトを与えることになる。現在、術前末梢血中CTCおよび肺静脈血中CTC値と再発の有無につき検討中である。
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