研究概要 |
神経組織に修飾を加えて、機能修復を行うニューロモデュレーションは、神経疾患の新たな治療法として注目を集めている。本研究課題の主目的である、中枢神経刺激療法の効果発現メカニズムの解明は神経科学の基礎的研究分野でも重要なテーマの一つである(Fuentes et al., Science 323:1578-1582,2009)。私たちの施設で行っている脳深部刺激術(deep brain stimulation, DBS)は、その顕著な治療効果から近年盛んに行われるようになった中枢神経刺激療法の一つである。私たちの今回の研究で、DBSは視床出血後に起こる2次性半身ジストニアに対して効果があることが明らかとなり、その適応疾患がさらに広がる可能性を示した(研究発表・雑誌論文参照)。また、すでにその効果が広く知られているパーキンソン病に対するDBSであるが、各症例の脳画像所見とDBSの効果に関する研究をすすめる中で明らかになったのは、脳白質量と術後の運動症状の改善率の強い相関関係であった。このことから、効果発現に重要な要素の一つは、運動回路のconnectivityが十分維持されていることと考えられる。この結果は、効果発現メカニズムの解明の足がかりとなる重要な知見と考えられ、現在投稿中の論文で発表予定である。効果発現メカニズムと神経新生の関係は、計画書に記載したような小動物を用いた実験が進行中であり、近日中に遺伝子解析や組織解析の結果をまとめる予定である。
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