研究課題
前年度に引き続き、MAGE-A4特異的T細胞受容体をレトロウイルスベクターを用いてγδT細胞に導入し、抗原特異的な抗腫瘍反応性を検討した。この遺伝子改変細胞は、腫瘍抗原特異的なαβ型T細胞レセプトーと、コニバーサルなγδ型T細胞レセプターを共に発現し、それぞれのレセプターを用いた機序により抗腫瘍効果を発現した。特に通常のT細胞に同様のT細胞レセプター遺伝子を導入したものに比較して、よりrapidな反応性を示すことが明らかとなり、がんに対するT細胞療法の有効な手段の一つとなることが示唆された(Gene Therapy 2009)。また、同様のレトロウイルスベクターを用いてMAGE-A4特異的T細胞受容体を患者の通常のT細胞に体外で導入し増殖させた後に移入する、進行期食道癌に対する遺伝子改変T細胞移入療法の臨床試験が2009年7月17日に厚生労働省の承認を受け、三重大学付属病院において開始された。さらに本研究を引継ぎ、本レトロウイルスベクターを改良することを目指し、遺伝子導入を受けるT細胞が内因性に持つT細胞レセプターを特異的なsiRNAを用いて発現低下させるベクター(siTCRベクター)を開発し、導入した腫瘍特異的T細胞レセプターの発現を飛躍的に向上させることに成功した(Cancer Research 2009)。また、進行期癌患者を対象として、患者に化学療法施行後に、あらかじめ体外にてRetronectinを用いて調製・増殖しておいた患者リンパ球を移入し、さらにMAGE-A4抗原ペプチドを用いたワクチンを施行する臨床試験を開始した。2例の卵巣癌患者が登録され、MAGE-A4特異的なT細胞の体内における顕著な増加を認めた。
すべて 2009 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Gene Therapy 16
ページ: 620-628
Cancer Research 69
ページ: 9003-9011
http://www.shikuken.jp