本研究は、配偶者を持たない乳がん罹患女性の、罹患当初から入院・外来治療を経て社会復帰するプロセスにおける体験のを特徴を明らかにし、それに基づいて配偶者を持たない乳がん女性への看護プログラムを作成することを目的としている。 本研究の調査は、(1)我が国における配偶者を持たない乳がん罹患女性に対する看護の現状を明らかにすること、(2)乳がんの診断を受け、治療を受けた乳がんの女性で、配偶者を持たない対象への面接調査、の2つより構成される。 平20年度(初年度)における調査(1)実施状況 文献検討および1大学病院、2総合病院において、乳がん看護に携わる看護師に対する聞き取り調査を実施した。これらの結果に基づき、平成21年においては、がん拠点病院における配偶者を持たない乳がん患者に対する看護の現状について、質問紙郵送による調査を実施する予定である。 平成20度(初年度)における調査(2)実施状況 配偶者を持たない乳がん患者に関する全般的文献検討を実施した。我が国の看護研究において、配偶者を持たない、と言うことを焦点にした系統的検討はなされていない、と言ってよい。未婚や未出産であることは、疫学的諸検討において乳がん罹患におけるリスクファクターとして言及されてはいるが、看護実践において扱われていることはほとんど無いのが現状である。なお、文献検討においては、今日の乳がん標準治療において重要な術後(あるいは術前)の抗がん剤化学療法について重点的に実施した。これは、治療そのものの副作用が女性の心身に強い影響を与える上に、治療の場が外来に移行した現状は、配偶者というサポートのリソースを持たない独身の乳がん女性にとっての大きな負担となる影響をもたらしうるという理由である。これらの内容の検討に基づき、来年度は直接の面接調査を実施する予定である。
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