本研究は、配偶者を持たない乳がん罹患女性の、罹患当初から入院・外来治療を経て社会復帰するプロセスにおける体験の特徴を明らかにし、それに基づいて配偶者を持たない乳がん女性への看護プログラムを作成すめことを目的としている。 本年度においては、配偶者を持たない乳がん患者への面接調査に基づき、その特徴と必要な看護援助を検討したところ、ソーシャルサポート、セクシャリティにおける援助ニーズが明らかになった。 (1)ソーシャルサポート:配偶者という乳がん患者においてもっとも重要とされる存在を持たないため、乳がん患者にとっては両親、きょうだいの存在が第一の支えとなる。健康で同居の両親は、診断期から治療期に渡って患者に安定の感覚をもたらす重要な要因となるが、既婚/別居のきょうだい、特に男性の兄弟の場合はサポートを求めることが困難な場合がある。友人、同僚も重要であるが、これは患者が無職の場合は同僚のみならず、友人との関係も希薄になりがちであった。両親がなく、無職の場合の事例においては社会との関わりが大きく制限され、生き甲斐の喪失につながっていた事例も見られた。 (2)セクシャリティ:若年あるいは将来に結婚や子供を望んでいる場合、将来のパートナーにいつ、どのように乳がんの事実を打ち明ければ良いのか、対象者は強い関心を抱いていた。しかし、病院では医師からも看護師からもそのような事柄について情報提供されたことはなかった。このような関心を持つ患者にとって、ほとんどが既婚者で高齢者が多く、子供や治療についての話題が中心となる患者会はニードにあわないものであった。 以上より、配偶者を持たない乳がん患者においては社会状況(家族状況、仕事の有無)のアセスメントの実施と、セクシャリティについての医療者側からの問いかけが必須であることが示された。
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