研究課題/領域番号 |
20592542
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
柊中 智恵子 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (60274726)
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研究分担者 |
小野 ミツ 広島大学, 保健学研究科, 教授 (60315182)
中込 さと子 広島大学, 保健学研究科, 准教授 (10254484)
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キーワード | 神経難病 / 遺伝 / 患者・家族 / 看護職 / 教育プログラム |
研究概要 |
今年度の研究目的は、昨年度明らかにした家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者・家族が抱えている課題をもとに、(1)さらに具体的に患者・家族の現状および課題を明確にし、(2)看護職の課題を明確にすることであった。 熊本大学医学部倫理委員会の承認を得て、患者・家族9名に対して面接調査を実施した。研究対象者は、患者については、発症して移植を受けた患者・発症前遺伝子診断を受けているが未発症の者に調査を行った。家族については、配偶者をFAPで亡くした者、子どもの発症の不安を抱えている者とした。患者7名は30代~60代であった。家族2名は、50代~80代であった。研究対象者に承諾を得て、ICレコーダーに録音したものを逐語録にし、内容分析の手法を用いて質的帰納的に分析した。その結果、患者については、(1)家族や親戚の中で、遺伝する病気ということは何となく理解していたが、親戚づきあいが疎な場合は自分のこととしては受け止めておらず、FAP専門医を受診するという直接的な行動をとることにつながっていなかつた。(2)家族内に同病者がいる場合は、特に移植の可否が気持ちの明暗を左右していた。(3)ドナーとなるために発症前遺伝子診断を受けることを意志決定した人がいた。結果、陽性であり、ドナーにもなることができずにいたが、家族内に同病者がいることで、ともに励ましあい、事態を前向きに受け止めて生さていくことを選択していた。移植という対症療法があることは、生きる希望となっていた。その一方で、将来のドナー候補者への気かねも感じていた。(3)親に対してわだかまりを語った人はいなかったが、自分が子どもに遺伝させているかしれないことへの罪責感があった。(4)配偶者とその家族への対応は、これまでの研究対象者からは大きな課題は聞かれなかったが、独身の未発症患者からは、結婚するときの相手への説明責任を考えている責任感が語られた。
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