研究課題
本研究はパルス中性子源として世界有数の大強度ビーム出力をもつ英国ラザフォード研究所のISISシンクロトロンに、本研究で開発した低出力インピーダンス高調波空洞(Low Output Impedance Cavity、以下LOIと略)を実装し、空間電荷力の緩和に関する実験的研究を行うものである。LOIの増幅器を、従来の低出力インピーダンス増幅器として知られるカソードフォロワーと比較した場合、本器は広帯域特性に優れ、且つ電圧ゲインが20倍以上大きいという特長を有する。平成22年度の研究目標は本LOI装置の最終調整を終了し最初のビーム実験を行うことである。(1)最終調整では、駆動段電圧波形の歪み原因を究明しこれを取り除かなければならない。(2)ビーム実験では、LOI装置本体が大強度ビーム下での運転に於いて安定であることの証明と、ビーム誘起電圧の測定から出力インピーダンスを求めることがテーマである。電圧歪みの問題では、シミュレーションにより原因究明に成功した。ISIS施設から提供されるマスター高周波波形そのものに約3%のサブハーモニック成分が含まれると、終段3極管グリッド・プレート間容量のミラー効果によりこの成分は27倍に増幅される。その結果、得られる波形歪みは実験の歪み量を良く再現することが分かった。実際、ISISのマスター高周波信号を分析すると、サブハーモニック成分が丁度3%含まれておることが示された。現在この成分を除去する回路製作が行われている。次に、(2)のビーム実験を行うには、本LOI装置をシンクロトロン内へ移設しなければならない。本年度はこれに伴う配線作業、冷却水配管工事を完了したが、ビーム実験は時間不足の為次年度に持ち越された。
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Proceedings of The first International Particle Accelerator Conference, IPAC'10
ページ: 609-611
http://www-accps.kek.jp/Low-Impedance_Cavity/index.html