平成20年度は、5月にドイツのグライフスバルト大学で「日独ワークショプ」が開催され、研究経過の内容を報告した。参加者の多くはバルト海域史の研究者であったが、露清間の貿易史の研究には関心を持たれ、様々なアドヴァイスを得ることができた。 21年2月には、シンポジウムの報告書『帝国の貿易18〜19世紀ユーラシアの流通とキャフタ』を出版することができた。これは、20年3月に行なった同名のシンポジウムをまとめた報告書であり、私自身も論文「キャフタを通じた中国茶のロシア向け輸出」を執筆した。シンポジウムそのものは、露清間で行われたキャフタ貿易に焦点を当て、ロシア史研究者、中国史研究者、モンゴル史研究者を招聘し、国境を横断する議論を行なった。日本人だけでなく、中国からも研究者を招いたので、充実した内容に仕上がっている。この報告論の編集を通じて、露清貿易に関する総合的な知見が得られた。とりわけ、中国における山西商人の研究を学ぶ機会があったことは有益であった。これを今後の研究に活かしたいと考えている。 21年3月には、ロシアのサンクト・ペテルブルクに2週間出張し、ロシア科学アカデミー図書館やロシア国立図書館で、露清貿易に関する資料収集を行なった。この収集した資料に基づき、21年度中に論文を二つ執筆する予定である。
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