日本は地震の活動期に入り、誰もが巨大地震に遭遇する可能性が高まっている。本研究は、災害に備えて、一人でも多くの命と、少しでも多くの生活を守ることを目標に、自助力と共助力を育む減災教育カリキュラムの開発を目的としている。 初年度2008年度は、以下の課題に取り組んだ。 課題1. 減災教育カリキュラムを開発するために、既往の文献430件を収集、減災教育のデータベースを作成し、その詳細なレビューに基づき、教科横断的・学年縦断的減災教育の理論を構築した。減災教育は危機に遭遇した時に必要な5つの能力「正確な技術」、「科学的理解」、「リスクの予測とリスクを回避する判断力」、「他者の痛みへの共感」、「コミュニケーション・地域活動」の向上をめざす。既往の実践研究では、5つの能力を獲得する過程で児童・生徒が「知識と行動を統合する総合的認識」を深め「自立の確立」と、「共生力の醸成」に到達することが明らかにされている。 課題2. 構築した減災教育の理論に基づき、「生きる力」をはぐくむことを理念として掲げている学校教育において「減災」教育プログラムの提案を行った。減災教育は、知識、技術、人間性などの要素を統合した総合的な教育である。その様々な要素を含む特徴を生かし、平成20年3月告示の小学校学習指導要領の全ての内容の中に分散している「減災」の要素を拾い集め、それらをつなぎストーリー性を持たせ、教科を主軸に「減災」を学習体系に組み込んだ。「総合的な学習の時間」を活用した防災教育とは異なり、通常の教科の中で、どの教師も実施可能である。 2009年度は、教師を対象に調査を行い、小学校減災教育カリキュラムの問い直しを行うとともに、引き続き中学校減災教育カリキュラムの開発を進める。
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