研究課題
萌芽研究
大阪湾1700mコアの深度410mから384mまでのステージ19に対比される海成粘土層Ma4を挟む26mの堆積物について約lmごとの花粉分析を行った。その結果、花粉化石データが示す植生と気候は標準海洋酸素同位体比が示す約2万年の才さ周期の氷体量変動とよく一致した変化を示すことが分かった。海洋酸素同位体ステージ19の気候は、大きく3つに区分される。初期は最高海面期ステージ19.3を含み、冷温帯気候を示すが、季節性の高い降水量で特徴づけられる。一方、19.2から19.0の後期は年中きわめて高い降水量の冷温帯である。ステージ19の中期に、アカガシ亜属が卓越する短期間の暖温帯気候(ヒプシサーマル)が見つかった。これは、最高海面期19.3の6000年後に起こっている。この事実は、最高海面期19.3に最温暖化せず、むしろ冷涼化が起こったことを示している。この冷涼化は、78万年前のMatuyama-Brunhes地磁気逆転の直前であり、地磁気強度が15-20%に減少する時期にほぼ一致している。逆転時には地磁気強度は元の60%まで回復しており、その時の気候は最温暖期を迎えている。本研究に匹敵する高解像度の磁気層序・花粉層序の研究を精査すると、イタリアの地中海沿岸、日本の房総半島でも、Matuyama-Brunhes地磁気逆転境界をはさんで、冷涼気候から温暖・高降水量気候への明瞭な変化が起こっていることが分かった。大阪湾1700mコアで見つけた寒冷化イベントは汎世界的な現象である可能性が高いことが分かり、雲量の増加に伴うアルベドの増加によって地磁気強度と気候が相関している可能性が高まった。今後、より詳細な分析を行って、既に出されている地磁気強度データと100年スケールで対比を行う必要がある。
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Palaeogeography, Plaeoclimatology, Palaeoecology 272
ページ: 115-123