研究概要 |
神経がん幹細胞のp53依存的放射線/抗がん剤/温熱感受性を検討するために、本年度はまず神経膠芽腫細胞の抗がん剤感受性を規定している遺伝子について調べた。神経膠芽腫細胞治療薬であるTMZおよびACNUの感受性をDNA修復遺伝子ノックアウトマウス線維芽細胞(MGMT-/-, FANCA-/-, FANCC-/-, FANCA-/-C-/-, FANCD2-/-, Lig4-/-, XRCC2-/-, Rad54-/-, DNA-PKcs-/-)、FANCG正常型ならびに変異型ヒト細胞およびBRCA2正常型ならびに変異型チャイニーズハムスター細胞を用いて調べた。さらに、神経膠芽腫細胞A-172を用いてDNA修復遺伝子を標的としたsiRNAのTMZおよびACNU増感効果についても調べた。 その結果、次の点が明らかとなった。 1. FANCG変異型細胞、BRCA2変異型細胞およびLig4-/-細胞のTMZならびにACNU感受性は著しく高かった。 2. BRCA2標的siRNAおよびLig4標的siRNAはA-172細胞のTMZおよびACNU感受性を高めた。BRCA2標的siRNAおよびLig4標的siRNAはA-172細胞でそれぞれのタンパクを抑制することを確認している。 また、TMZ及びACNUによってできるDNA二本差切断(DSB)をγ H2AX抗体を用いてフローサイトメトリーで計測したところ、Lig4-/-細胞およびBRCA2変異細胞により多く蓄積し、修復されにくかった。TMZ及びACNUによってできるDSBの修復にLig4およびBRcA2が関与することが明らかになった。 これらの結果によってLig4、BRCA2を制御することが、TMZ及びACNUによる化学療法において、神経がん幹細胞を増感する有効な手段になりうるということが示唆された。
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