(課題1)ジョン・デューイらの思考と学習に関する理論的知見をもとに、協働的学習の実践過程に関する基礎研究を行いその一部を論文として発表するとともに、協働的思考学習に関する研究成果をイタリア・パドヴァ大学で開催されたInternational Council of Philosophical Inquiry with Children Conferenceにて発表し、(課題5)そこで諸外国の実践者を対象に聞き取り調査を行った。(課題2)小学校教員や実践者などが参加する哲学と対話教育に関する研究会を二回主催し、小学校での対話教育、教職課程での哲学・倫理学教育のあり方や、中等教育までの哲学教育の意味、あるいは環境教育と対話の関係などについての各実践報告を受け、カリキュラム、教材などについて検討を行った。(課題3)大学生・大学院生対象に対話技法セミナーを開講し、専門・学年の異なる学生どうしの対話を促進しつつ、対話進行役養成プログラムを実施した。受講した学生のうち、希望者を高校で行っている哲学の授業や哲学カフェの進行役として派遣し、実践での進行役トレーニングも行った。(課題4)京都府内の高校と連携し、大学院生とともに哲学対話のための通年の教育プログラムを作成し、その結果を検証した。また、兵庫県西宮市の小学校でも対話型の授業を継続して実施し、オスカル・ブルニフィエの問答法を参照して、質問と答えを通じてともに考えを深めるためのプログラムを作成するほか、教員を対象とする研修会を行った。さらには、兵庫県の少年院施設でも年四回、対話ワークショップを開催し、その成果を国際臨床哲学ワークショップで発表した。この対話ワークショッププログラムは、少年の社会適応訓練の一環として、コミュニケーションスキルの向上と倫理的思考力の養成を目的としたものであり、来年度には、この施設の正式プログラムとして取り入れられることが決定され、対話による反省的・協働的思考学習プログラムの社会への実装可能性について検証を重ねることになった。
|