双有理幾何の標準理論は対数的極小モデルプログラム(LMMP)の形で定式化されている。その最重要な課題であるフリップの終止予想の視点から、LMMPの過程で現れる特異点の局所構造を極小対数的食違い係数に着目して研究する。それらの特異点は極小対数的食違い係数によって定義され、終止予想は極小対数的食違い係数の二つの局所的問題、すなわち下半連続性及び昇鎖律に還元されるからである。 研究の指針となるのが、極小対数的食違い係数の上からの有界性問題である。極小対数的食違い係数の本質的な意義は、それが特異点の程度を反映する処で、特異点の程度が悪いほど係数が小さいことが経験から知られている。さらに係数の有界性は、終止予想の還元先である下半連続性と昇鎖律のどちらの系でもある。この問題を、特異点解消上の各例外因子に沿い適当な重複度を持つ関数の成す集合を解析する手法で研究する。 具体的方法として、先ずRiemann--Roch公式を応用し、特異点の超平面切断を考えることで低次元の分類論へ帰着させる。もう一つ、Mustataらのモチーフ積分論による極小対数的食違い係数の記述を発展させる。
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