研究概要 |
本研究は、カメラにより撮影された物体の姿勢推定の手法の開発と、理論的な側面の考察を目的としている。 本年度の研究成果は次の2点である。 まず、3自由度の姿勢推定に用いる姿勢表現についての実験的評価を行い、回転行列を用いる利点とその有意性を示した。3自由度の姿勢表現には、オイラー角(ロール・ピッチ・ヨー)、単位四元数、回転角・回転軸(指数写像)、3x3回転行列などがある。しかし、一般的にパラメータ表現がパラメータ推定に大きな影響を与えるにもかかわらず、姿勢推定においてどの表現が適切なのかということは従来検討されてこなかった。そこで本研究においては、100個の異なる物体について100の異なる姿勢の推定を行い、姿勢表現が推定精度に与える影響をt検定を用いて定量的に評価した。その結果、回転行列を用いた場合の姿勢推定誤差が他に比べて優位に小さいことが示された。 次に、3自由度回転の高周波表現を用いた姿勢推定手法を開発し、その有効性を示した。3自由度回転を3x3回転行列Rで表した場合、見えに基づく姿勢推定ではその行列の冪R^1, R^2,...,R^nも同時に学習することができる。これらを推定にも用いることで、R^1を単独で用いる場合に比べて推定誤差を優位に減らせることが示された。数値シミュレーションにおいては、Rの推定値に比較的大きなノイズが乗った場合でも、推定誤差は急激に減少することが確かめられた。見えに基づく手法に応用した結果、姿勢推定手法としてもっとも単純な線形回帰を用いた場合でも、推定誤差を減少させられることが確認できた。
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