本年度は、まず国内一流競技者の走動作を世界一流競技者と比較することによってその特徴を導き出すこと、つづいて国内一流競技者のレースと実験走における走動作を比較することによってトライアスロン競技特有の走動作の特性を明らかにすることを目的に分析した。 五輪優勝者や世界選手権シリーズ優勝者を含む世界一流競技者との比較からは、日本選手の特徴は身長あたりでもストライド、特に非支持期における重心移動距離が小さいこと、ピッチが高いにも関わらず接地時間が長いこと、支持期において脚のスウィング動作よりも屈伸を強調した動作になっていることなどが明らかになった。世界一流競技者の走動作は陸上競技の長距離走における技術と類似しており、陸上競技とトライアスロンという形態、体力が異なる競技であっても、持久的な走行における技術には共通点が多いことが裏付けされた。 また、レース時と同様の走速度で実験的に走らせ、レースと同様にその動作を撮影し、レースと実験走における走動作を比較した。その結果、実験走では非支持時間が長く、接地時間が短かったこと、支持期後半の身体重心の上昇が大きかったこと、支持期の鉛直速度の変化が大きかったこと、支持期後半の股関節および膝関節の伸展速度が大きかったこと、接地前の股関節伸展トルクによる正パワーが小さかったことが分かった。これらのことからトライアスロンにおける疲労は主に支持期にあらわれ、レースになると接地時に身体を受け止めて上前方へ脚を伸展させる動作ができなくなると考えられる。また、疲労がない時なら世界一流選手の走動作に近くなるとも言えず、普段から技術的課題を有しているが明らかになった。
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