研究課題
本年度は、昨年度まで取り組んできたプロジェクト「摺物による江戸狂歌史の再検討」の成果を受け、山陽堂の伝を研究し、発表した(「狂歌師の虚飾山陽堂という人」、'Surimono to Publicize Poetic Authority : Ybmono Magao and His Pupils' )。狂歌壇的な重要性は高くない入物ではあるが、天明狂歌が変質し、次の文化文政期のそれが形成されるという狂歌の変容過程を考える上で象徴的・示唆的な存在であり、狂歌研究において意義ある伝記研究であったと考えている。また、頭光の伝記資料を用いて、その権威を自らの正統性の担保に利用した浅草市人について論じた(「天明狂歌と『連』-「正統化」という機能」)。「連」について論じることが所与の課題であったため「連」に寄せた論じ方とはなったものの、天明狂歌第2世代の狂歌四天王の1人とされる光、およびその次代に-大勢力を築いた浅草市人のいずれについても重要な伝記的事項を追加しえた。天明狂歌壇の盟主であった大田南畝についても、その狂歌界の離脱をめぐる重要な問題について論じた(「笑はば笑へ-政変期の南畝」)。南畝伝の鍵となる重要な転機の研究といえる。本年度刊行した著書『天明狂歌研究』は、旧稿を中心とするものではあるが、そこに収録した南畝および6名の狂歌師伝のいずれにも、発表後に得られた知見を増補加筆している。狂歌師の掃苔資料についても、林旧竹『墓碣余誌』より入力を開始している。
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国文学解釈と鑑賞 74-3
ページ: 83-91
太田記念美術館『蜀山人大田南畝』(図録)
ページ: 99-104
国語と国文学 85-7
ページ: 44-58
Reading Surimono : The Interplay of Text and Image in Japanese Prints (単行本, Brill/ Hotei Publishing)
ページ: 46-52