本年度は、当初の計画通り中世・近世のコーパス作成を中心にした。国文学資料館の「日本古典文学本文データベース」の中世・近世の全数について、検索しやすいようにテキストを加工し、国立国語研究所開発の全文検索システム「ひまわり」で扱えるようにした。現段階では、一応の検索が可能である状態にあることが確認でき、用例の予備調査として効果を上げた。 予備調査のもとに、2009年2月28日、麗澤大学の滝浦真人教授が主催した「科研費補助金によるワークショップモダリティーとポライトネスの語用論」において、「モノダの解釈と語用論の関連性-「当為」を中心に-」という口頭発表を行った。これは、現代語におけるモノダ文だけではなく、近世におけるモノダ文においても「当為」と呼ばれる用法には語用論的条件をふまえた研究が不可欠であることを主張し、言語変化に対する1つの研究手法を提示することを試みたものである。従来の研究はモノダを助動詞と一括りにし、助動詞モノダが持つ多義的な用法として「当為」を位置づけるものであった。本発表では、モノダが、構文的に、一言語形式として作用する意味はあくまで〈一般的傾向〉であり、その基本義をベースとして、人称や実現可能性といった諸要因により、それぞれの解釈が生じると考えた。こうした観点は、言語形式と意味の関係を問い直すものであり、本研究の主目的である名詞の機能語化に関わる1つの試論と位置づけられる。
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