平成22年度は本研究の最終年度でもあり、これまでの成果に基づき、接続語句を利用して情報間の論理関係の把握する能力を高めるEFL読解指導への示唆を導くために、実践的な指導研究とL1としての英語教材の考察に取り組んだ。一方、接続語句の体系的指導のためには、Causal以外の論理関係のパターンと照らし合わせて指導する必要性が感じられた。そのため、改めて情報間の論理関係とそれを明示する代表的な接続語句の整理を行った。先行研究においても論理関係には様々な分類が見られる中で、Causal(因果関係)やIllustrative(例証)のようにそれまでの文脈との連続性を保つものと、Adversative(逆説)のように不連続性を表すものとでは、前者の方が読み手の処理速度が速く、記憶にも残り易いとする仮説が指示されている。 本研究では、読解能力の高い読み手ほど接続語句を読解中に適切に利用してCausal関係を把握することを、読後にrecognitionタスクや想起によってoff-lineで調査してきたが、読解中の処理速度の違いなどon-lineの観点をまだ取り入れていなかった。そこで、総合的に接続語句を利用できる能力を高めるためには、Causal関係とは異なり、先行情報との「離反」を表すAdversativeな関係を日本人英語学習者がどのように、またはどの程度把握できるのかも明らかにするために、英文読解中に適切なlinguistic markersを選択肢から選ぶ時の読み手の思考を探ることを目的として小規模であるがプロトコル方を用いたデータ収集を行った。その結果、CausalよりもAdversativeの方が、戻り読みや理解を確認するための情報反復が多く、理解に自信のない場合には情報のつながりをAdditiveな関係とみなして読み進む傾向が高いことなどの特徴がいくつか見出された。
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