2008年10月より、ドイツ・コンスタンツ大学で、客員研究員として研究を行っている。現在は、団体訴訟制度研究の第一人者であるシュタッドラー教授のアドバイスを受けつつ、適切な文献の収集・精読・分析作業中である。また、関連のテーマを取り扱った学会等(3月18日〜20日にイギリス・オックスフォードで開催された国際民事訴訟法学会等)への出席等によって、アクチュアルな情報収集にも努めている。当該テーマである団体訴訟における判決の効力を考える前提として、母法国であるドイツにおける団体訴訟制度の全体像を把握したうえで、その問題点を明らかにしておくことも有用であると思われる。そこで、今年度は、まず、ドイツにおける団体訴訟制度の歴史、団体訴訟の種類と利用状況、他の集団訴訟制度との相違および現在指摘されている論点などについて、調査することとした。わが国では、現在、業者に対する違法行為の差し止めのみならず、それを超えて団体による業者への損害賠償請求の可否等が検討されているが、ドイツの類似の制度である利益吐き出しの制度は実際にはほとんど利用されていないこと、また、司法による私的制裁に期待するところが大きいアメリカと、行政主導での政策実行が中心となるドイツとでは、司法制度の有する役割が異なるため、そもそもクラスアクションのようなオプト・アウト型の私的実行を認めるべきではないという議論がなされていることが注目された。さらに、消費者の被害額に着目し、個人での訴訟追行のインセンティブがある程度期待できる多額のものと、少額被害のため個人での訴訟追行が期待できないものとを区別し、異なった訴訟救済システムを構築すべきであるという議論もなされている。現在は、中間的に、以上についての研究成果を公刊すべく準備中である。
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