本研究の目的は2つあり、1つ目は日本における中古住宅市場と家計の資産選択の行動の関連性を検証すること、2つ目は住宅ローンの性質(特に住宅ローンの遡及性に注目して)と家計の資産選択の行動の関連性を検証することである。 まず、1つ目の研究の成果であるが、研究期間の初年度である平成20年度は、OECD加盟国を対象に中古住宅市場のデータベースの収集を試みた。しかし、中古住宅市場に関する国際データベースは、OECD関連機関やデータ提供機関等から入手不可能である(すなわち存在しない)ことが判明した。従って、現在、直接加盟国に行き、資料やデータを収集したり、各国の統計局のウェッブページを検索するなどして、1カ国ずつデータを収集している段階である。非常に大変な作業となっているが、逆に、中古住宅市場に関する国際のまとまったデータが存在しないことは、そのようなデータベースを作成すること自体が意義のあるものとなる。また、中古住宅市場の国際データベースが存在しないことを考えると、本研究は世界的に見ても検証されていない研究であることが判明し、この研究の重要性を改めて再認識するものである。 次に2つ目の研究の成果であるが、2つ目の研究については、計画としては平成22年度から行う予定であったが、1つ目の研究についてデータ収集に時間を費やしていることから、2つ目の研究についても開始している。平成20年度の成果としては、住宅ローンの遡及性を議論する前に、そもそも住宅ローンが家計の資産選択の行動にどのような影響を与えているのかを、日本の家計の個票データを用いて検証した。その結果は現在論文としてまとめており、平成21年度中のレフェリー雑誌掲載に向けて準備を行っている段階である。
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