本研究の目的は、家計資産のほぼ半分を占める住宅等の実物資産の流動性が、家計の資産選択の行動にどのような影響を与えているのかを明らかにすることである。 まず、平成21年度は、家計の資産選択の行動における中古住宅市場の発達度の影響を理論モデルから明らかにした。理論モデルから、中古住宅市場が発達しているほど(すなわち、家計資産に占める住宅等の実物資産の流動性が高いほど)、家計はリスクの取れる資産選択の行動が取れることが示された。 そして、データから本研究者の示した理論モデルを実証するため、OECD加盟諸国を対象に、関連データの収集を試みたが、特に中古住宅取引件数のデータが一括で取れないため、平成21年度はOECD加盟国30ヵ国の政府統計局や関連機関に直接問い合わせ、内14ヵ国についてデータを入手することができた(なお、内8ヵ国については中古住宅取引件数を調査していないとの回答、残り8ヵ国については返答無し)。中古住宅市場のデータについては、本研究者の知る限り、日本では米国・英国・ドイツ・フランスの4ヵ国のみしか公表されていないため、14ヵ国の中古住宅市場(特にその発達度について)を国際比較できるデータベースを作成したことは、意義のある成果である。 そして、データ入手が可能な14ヵ国について、中古住宅市場の発達度と家計の資産構成の関係を分析したところ、本研究者が示した理論モデルの含意の通り、中古住宅市場が発達している国ほど(住宅の流動性が高い国ほど)、家計の金融資産に占める有価証券等の比率が高い、すなわちリスクの取れた資産選択の行動を取っていることが判明した。平成21年度は、理論モデルの構築と実証分析の両面から、本研究の目的を明らかにすることができた。平成22年度で、学会での報告や論文投稿など、研究成果の公表を開始する。
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