本研究の目的は、「日本の家計による有価証券等のリスク金融資産への投資が、欧米の家計に比べて著しく少ない要因として、日本における既存住宅の流動性の低さ(すなわち中古住宅市場が未発達であり、規模が小さいこと)が影響している。」という仮説を、理論と実証の両面から検証することである。 この目的に対し、研究期間4年間において、以下3つの研究実施計画を立てた:(1)国際データからの検証、(2)理論モデルの構築、及び、理論モデルをベースとした数値シミュレーションによる検証、(3)個票データによる実証分析。そして、平成22年度までに以上の計画を全て実施し、その結果をまとめて査読付き論文雑誌に公表した。しかし、その後、学会や研究会での報告において、理論モデルの解釈が不十分であること、及び、個票データの取り方が適切とは言えないこと(すなわち、理論モデルを正確に検証できるデータとしては不十分であること)の指摘を受けた。 従って、平成23年度では、1)理論モデルの再検討、及び、2)理論モデルを正確に検証できる個票データの収集、の2点について研究計画を立て、全て遂行することができた。現在、その結果を投稿用論文としてまとめている段階である。 平成23年度に実施した研究内容を論文としてまとめる作業が研究期間内に終えることができなかったが、平成22年度までの研究内容をまとめた論文は、財団法人住宅金融普及協会実施による懸賞論文で最優秀論文を受賞しており、論文のアイデアは十分評価されているものと自負している。それに対し、平成23年度においては、公表論文の改良を行ったことになるが、その改良内容は、理論モデルとその検証に用いるデータの改善という論文の本質を突いたものであり、その改善の意義は大きい。平成23年度に実施した研究内容は、平成22年度までに公表した内容をベースとしているものの、理論モデルの捉え方や使用するデータが異なるため、新たな論文として査読付き論文雑誌に投稿する予定である。
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