本研究では、日本の家計による有価証券(リスク金融資産)の保有が欧米諸国の家計に比べて著しく少ない要因を、家計が保有する住宅資産の流動性(すなわち、中古住宅の売却・現金化の容易度)と関連付けて分析するものである。その背景には、欧米諸国においては、住宅の取引は中古物件が中心であるのに対し、日本では新築物件が中心になっていることにある。従って、日本では、中古住宅の売却は必ずしも容易とは言えず、家計資産の内、大きな比重を占める住宅資産の活用が容易ではないことが、家計の資産選択の行動において、流動性の高い預貯金に選好させる要因になっていると考えられる。本研究では、市場における住宅資産の流動性が、家計の資産選択の行動に大きなインパクトを与えていることを、理論と実証の両面から分析したものである。
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