本研究は、平成20年度から平成22年度までの3カ年にわたる研究期間を想定している。平成20年度は、その初年度に該当し、研究計画に則り、次年度以降の実証的考察に必要となる分析フレームワークの構築を試みた。実施した研究内容は、以下の通りである。 第1に、先行研究のレビューである。レビューの対象となる文献は、グローバル経営に関する文献と知識集約型ビジネスに関する文献の大きく2つの領域に分けられる。前者については、本研究の相対的な位置づけを明らかにするという狙いもあり、対象を広くとり、サービス企業の国際化、グローバル化に関する先行研究に関して、ジャーナル論文を中心にレビューを実施した。後者については、文献の絶対的な分量という点で、ジャーナル論文だけでは十分ではないと判断したため、書籍、論文集(いずれも洋文献)も対象に含めてレビューを行った。 第2に、これまでの研究成果の整理である。筆者は、本研究に関連した研究をこれまでも継続して行ってきているが、その研究成果について再検討を行った。知識集約型ビジネス、とりわけ、本研究で直接的な研究対象としている経営コンサルティング・ビジネスは、エンロン事件が発生した2000年前後から急速な業界再編が進んでいる。加えて、ICTの進歩により既に上梓している研究内容の陳腐化も少なからず発生している。そのため、現在の最新の業界状況を踏まえながら、これまでの研究成果の位置づけを確認することを行った。 以上の考察の結果、知識集約型ビジネスのグローバル経営については、大枠の戦略の類型化という点においては、サービス企業、特にプロフェッショナル・サービス・ファームの分析フレームワークが援用できるものの、実証的考察という点においては、ローカル市場(日本市場)におけるコンサルティング方法論の活用の実態といった戦略の内容分析が不可欠であることが示された。
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