本研究の目的は、カリフォルニア州の言語マイノリティ教育の多様性に対して、英語による教育の質の保証を意図する学校評価政策が与える影響を明らかにすることである。平成20年度は、まず、カリフォルニア州教育局等のインターネットで公開されているデータを用いて状況把握を行い、その結果、NCLB法にもとづく学校評価において、継続して要改善校あるいは、要改善学区となっている学区が増加しており、本法の目標達成が困難な状況にあることが明らかとなった。このような状況を踏まえ、カリフォルニア州教育局での訪問調査を行った。その結果、NCLB法は、英語学習者(EL)の人数によって補助金が配分されるため、予算確保の安定性が高まったことが明らかになった。しかし、アカウンタビリティが強く求められており、目標達成の見通しについては、担当者も悲観的であった。また、要改善学区に対する技術的支援のパイロットプログラムを実施しており、州による学区の改善指導マニュアルを特別に入手することができた。また、次年度以降に本格的に調査する学校レベルでのバイリンガル教育(双方向イマージョン・プログラム : TWI)の実施状況を把握するために、予備的な調査として、サクラメント市のチャータースクール(CS)・Language Academy of Sacramento(LAS)校で訪問調査を行った。その結果、LASは、公立学校でのバイリンガル教育を事実上禁止した州民投票・提案227以降、CSに移行しており、多様な教育理念・方法を確保するためのCSの可能性を確認することができた。このことは、要改善校に認定されながらも、保護者・地域住民の支持・協力と、学区教育委員会との良好な関係のもとで、チャーターの更新が認められたことにも現れている。ただし、予算確保、施設確保といった課題を抱えていた。
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