研究概要 |
本研究においては、イングランドの小学校幼児教育課程における多文化教育がいかに行われ、子どもたちや教員の価値観を形成しているのかについて解明することを目的とした。今年度は7月にイングランド・リバプール市の小学校、聖アン小学校の幼児教育課程において月曜日から金曜日の5日間参与観察およびインタビューを中心としたフィールドワークを行った。 幼児教育課程には3歳児のクラス(Nursery)と4歳児のクラス(Reception)の2クラスがあり、カリキュラムとしてはEarly Year Foundation Stage (EYFS,2008)が施行されていた。ここではEduCareの概念の下、いわゆるNational Curriculumから幼児教育を切り離し、より子どもの生活を全体として捉えようとする。本研究ではとくに4歳児クラスに焦点化し、担任教員の子ども観、教育観を半構造的インタビューによって理解し、教育実践のありようと子どもたちの行動様式を参与観察し、子どもたちの価値観形成との関連について解明することを目的とした。 エスニック・マイノリティの多い当該クラスにおいて、担任教員は自らの先入観による影響を意識し、子ども一人ひとりを個性でもって理解するよう心がけていた。しかしながら、カリキュラムが「レッスン」という授業を中心に進められるため、自由遊びの時間に集団遊びの展開が乏しいようであった。これは、探究活動の質的違いによって出現している現象であると考えられ、子ども同士の人間関係の深まりに課題を残していた。カリキュラムや教育方法の構成が多文化教育において重要な要素となる異文化理解の契機を左右する可能性があることを解明した。
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