研究課題
若手研究(B)
本研究の目的はカペリ恒等式を手がかりに普遍包絡環、またdual pairなどの無重複表現における精密な構造を明らかにすることである。リー環の普遍包絡環は表現論において非常に重要であるが、その具体的な構造については一般にはまだ十分明らかになっている訳ではない。しかし一般線型リー環の場合にはカペリ元(さらにそれを一般化したquantum immanant)という普遍包絡環の中心元が知られており、具体的な問題も満足のできるレベルで解決できる。本研究の目的はこれら一般線型リー環に関する精密な結果を他のリー環に拡張することである。さらにこの代数と微分作用素のq類似を構成した。この枠組みは一般線型リー環上の量子展開環の表現を調べるのに利用できる。例えば、この量子展開環とIwahori-Hecke代数との双対性も簡潔に証明できる。近年、古典リー環の場合の研究はかなり進んだが、まだ一般線型リー環以外のquantum immanantについてはほとんどわかっておらず、これが本研究の大きな目標ということになる。過去の研究で行列式は直交リー環と、パーマネントはシンプレクティック リー環と相性が良いという謎めいた現象が見られた(表現に関してもこのような相性の良し悪しがある)。似たような奇妙な双対性はある種のシューア型函数にも見られる。これらの現象は最終的にはいろいろなリー環におけるquantum immanantの性質という形で解決されるべきである。現時点ではOkounkovとOlshanskiによって研究のとっかかりが得られているだけで、その具体的な記述やそれに対応するカペリ型恒等式などはほとんど解明されていない。これを攻略するための効果的な武器として、テンソル代数と無限対称群を融合した代数が有効利用できるのではないかと考えている。
すべて 2010 2009 2008
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
京都大学数理解析研究所講究録 Vol .1722
ページ: 90-96
Mathematics for Innovation in Industry and Science(edited by Gerrit van Dijk and Masato Wakayama DE GRUYTER ISBN 978-3-11-022612-6
ページ: 135-145
International Journal of Mathematics Vol.20, No.3
ページ: 339-368
Selecta Mathematica(N.S.) Vol.14, No.2
ページ: 247-274
数理解析研究所講究録別冊 B7
ページ: 157-176