研究概要 |
実数において通常の和・積を, それぞれmax・通常の和で置き換えてできる新しい代数系をmax-plus代数という. max-plus代数は古くは離散数学, 計算機科学等において研究されてきたが, 近年, その代数的特性を生かして連続時間・状態における自然科学, 工学における非線形問題に活用されている. 通常確立論においては事象の確率を0と1の間の実数によって表現するが, これを-∞と0の間のmax-plus代数における数で置き換えてできる確率論がmax-plus確率論である. 多くの決定論的制御問題はmax-plus確率論の立場から捉え直すことができ, 最大化の操作に伴い現れる非線形性がmax-plus代数の下では線形となることから, max-plus代数の下での線形理論が非線形問題に適用可能になる. 本研究の目的は, max-plus確率の観点からリスク・センシティブ確率制御とH無限大制御の関係を調べることにより, 確率論の問題, 偏微分方程式などにおける解析的問題に新しい数学的視点を与えることである. 本研究においては, 無限時間区間H無限大制御における1階エルゴード型Bellman方程式の粘性解の構造について研究を行い, すべての粘性解を考えたとき臨界値に対応する解が存在することを示した. 臨界値に対応する解を特徴付ける条件として, もし解に対応するmax-plus線形半群がmax-plusの意味で不変測度を持つならば, 臨界値に対応する解に限ることを示した.
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