空間1次元反応拡散方程式のノイマン問題、特に非自明定常解より導かれる線形化固有値問題について考える。本研究では、拡散率を表す正のパラメータεが微小な状況での固有値・固有関数のεに関する漸近公式の導出、及び反応拡散方程式に現れる界面のダイナミクスへの応用を主目的とする。 いくつかの具体的な非線形項に対して得られた漸近公式をてがかりに、より一般の双安定型非線形項についても同様の漸近公式の成立が予想される。ここで予想とは以下の内容を指す「線形化問題はいくつかの特別な固有関数を有し、これを通して全ての固有関数が分類される。このとき漸近公式は核となる特別な固有関数と普遍的な対称性(擬周期性)の2つの情報を含む。£予想に基づき今年度は以下の2つの問題の解明に取り組んだ : (1) 負の固有値及び対応する固有関数における漸近公式、 (2) 十分大きな正の固有値及び対応する固有関数における漸近公式。 それぞれの固有値はε→0の特異極限により得られる線形化問題の0固有値と連続スペクトルに関係し、負の固有値は安定性の観点から特に重要である。 今年度は既に得られた結果に関する論文執筆を行い(龍谷大・四ツ谷教授との共同研究)、その過程で楕円関数に基づく手法を見直しより一般化された証明方法に改良することができた。いくつかの仮定の下で(1)の場合に予想は正しい。(2)については少なくとも問題がLame方程式に帰着される場合には正しいという新たな予想を得た。いずれも固有関数の対称性の議論が本質的であり、量子力学におけるバンド理論と密接な関わりを持つことがわかってきた。 発表論文に関しては、四ツ谷氏との共著論文を投稿中である。また国際会議WCNA2008にて研究発表を行い、対応するディリクレ問題に関する論文を報告集に投稿中である。講演に関しては上記国際会議をはじめ国内外にて7回(うち主要4講演)の講演を行った。
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