研究概要 |
平成21年度における研究は、双安定型反応拡散方程式の定常解における線形化固有値問題について、より「一般的な非線形項」の場合に、固有関数の普遍的な情報を引き出すことが目的である。具体的には、方程式に含まれる微小パラメータεに対する、線形化固有値問題の (1)負の固有値に対する固有関数の、ε→0の漸近公式 (2)十分大きな固有値に対する固有関数の、ε→0漸近公式 の導出が主な目標である。 これらの解明め土台となるのは、龍谷大学・四ツ谷教授との「特別な非線形項の場合」における固有関数の漸近公式、の研究である。平成21年度は、その改良な見直しを進め議論の一般化を進めてきた。昨年度の研究にて得られた知見として、固有関数の形状を規定する(a)局在パターン,(b)擬周期性(対称性)、の2点が重要であることが挙げられる。(a)については固有値問題においてε→0のスケーリング極限を通して現れる極限問題が密接に関わっており、その構造の解明は容易ではない5しかしながら(1)の場合に必ずスパイク形状が現れることが保障されている。一方、(b)の情報については、周期係数を持つ線形方程式の理論(Floquet理論)によって正当化可能であることがわかった。これにより(1)の場合、証明に必要な(a),(b)の情報が得られ、一般的な仮定の下での証明が完成した。この手法は、(1')十分小さな固有値((2)に相当しない)に対する固有関数の漸近公式の証明について応用可能である。また、新しい手法では、固有値の精密な情報を用いないため、固有関数の漸近公式を通して固有値の漸近公式が得られることが期待される。 平成21年度は、さらに上述の(2)の問題や、固有関数の形状の反応拡散方程式への応用などに取り組む予定であったが、平成20年度の研究からの進歩が十分でなく、現段階で完全な成果が得られていない。これらの問題については、平成22年度以降検証を続けていきたい。
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