研究概要 |
本年度は,以下のテーマについて研究を推進してきた。 ■Montgomeryらが提唱した負温度点渦系の平衡分布解に関する検討 Montgomeryらが提唱した「負温度点渦系の平衡分布はsinh-Poisson方程式で記述される」という予言について検討を進めた結果,以下の新たな知見が得られた。 (1) Joyceらが点渦系について導いたsinh-Poisson方程式は,円筒境界を有する点渦系に対しても成り立つ。 時間発展シミュレーションの途中経過について,βを求めてみたところ,初期はβの値は一定に達していなかったが,後半はほぼ一定の値に落ち着くことが確認できた。これは系が時間漸近的に平衡分布に確かに到達していることを表している結果と言える。 (2) 理想気体に対して成り立つT∝E/Nという関係式は,点渦系に対しては系のエネルギーが高くなるにつれて成り立ちにくくなる。 理想気体の場合,温度は1自由度あたりのエネルギーと考えることが可能である。すなわち,エネルギー一定で粒子数のみを変化させた場合,βは粒子数に比例するはずである。しかしこれが成り立たないのは,クーロン相互作用に似た長距離力が点渦系には作用しているためと考えられる。 (2) 構造形成に及ぼす粒子性は無視できない。 上記のエネルギーを一定にして粒子数を変化させたシミュレーションにおいて,最終的に到達する平衡分布が粒子数によって変化する場合があることを新たに発見した。ここから,構造形成における粘性の影響という新たな問題が生まれ,現在,このテーマについて検討を進めている。
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