研究概要 |
現在日本の様々な海岸で砂浜が減少し,大きな社会問題となっている.この研究は,変動帯に位置し,急峻な河川から土砂供給を受けるわが国の海浜環境の特徴である礫サイズの粒子を含む混合粒径場における土砂移動機構を,礫の接触ネットワークという新しい視点から解析し,砂礫共存場での土砂輸送予測を格段に高精度化することを目的とし実施した.まず,任意波形振動流装置において,中央粒径7.3mmの礫と0.27mmの砂の混合比を変え,流速非対称振動流による漂砂量の測定を行った.その結果,礫の体積混合率が約60%を超えると,漂砂量が大きく減少することが明らかになり,砂礫混合土砂の漂砂量に関して,臨界混合比が存在することが示された.次に,臨界混合比付近の混合比にある砂礫の3次元的な粒子間の接触関係を調べるため,個別要素法により混合粒径粒子の充填を行なった.その結果,礫の体積率が臨界混合比に達すると,砂礫混合層内で礫-礫間の配位数が急激に上昇し,礫同士の接触ネットワークが発達する一種の相転移が生じることが明らかとなった.このような混合土砂の粒子間接触ネットワークの相転移に起因する土砂移動量の変化についてはこれまでほとんど議論されておらず,本研究で,このような効果の存在がはじめて定量的に明らかにされたと言える.また,接触ネットワークの相転移の効果を漂砂モデルに組み込むことにより,漂砂量の予測精度が格段に向上することが確認された.本研究では,混合する砂礫の粒径を固定して実験を行っていたため,その適用性には限界がある.しかし,本研究で明らかにした接触ネットワークの効果に着目したより広範な水路実験データを積み重ねることにより,一般の二粒径混合土砂,さらには多粒径混合土砂にモデルを拡張し,より適用性の広い混合砂礫土砂の輸送量に関する予測法の確立が見込まれる.
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