研究概要 |
セルロース系バイオマスからのエタノール生産におけるコストを低減するため、スーパー酵母の育種を行う;すなわち、セルロースからエタノールへのbio-conversionにおける律速段階である「細胞表層のセルロース糖化酵素発現量」や「エタノールストレスに対する耐性」の劇的な向上を目的とする。スーパー酵母の育種には、大規模な遺伝子発現を制御する機能をもつタンパク質(基本転写因子)の遺伝子spt15に着目し、Error prone PCRとHigh-throughput screening技術、そしてGene shufflingといった進化工学的手法を用いてspt15遺伝子配列を合目的的に改変する。 昨年度は基本転写因子変異酵母ライブラリーの作成を行なった。本研究は、変異酵母ライブラリーからセルラーゼ高発現酵母を育種するために、細胞表層に発現したセルラーゼの酵素量を蛍光免疫染色で蛍光強度に置き換えることにより、Fluorescence-activated cell sorter(FACS)を用いてセルラーゼ高発現株を蛍光強度の高い細胞集団としてhigh-throughputに分取することを目的とした。酵母Saccharomyces cerevisiae MT8-1株に対して、セルロース分解に必要な3種の酵素;endoglucanase II(以下EGII),eellobiohydrolase II(以下CBH II),β-glucosidase(以下BG)を表層発現するための3種のプラスミドを組み込んだ株(以下MT8-1-III)を親株として用いた。また、MT8-1III株に炭素イオン(^<12>C^<5+>、20MeV)を線量100Gyで照射し(以下、重イオンビーム照射)、変異株集団を調整した。酵母表層のセルラーゼ分子の量を蛍光量として評価するため、EGIIならびにCBHIIのタグとして融合発現させたRGSHis_6およびFLAGに対する一次抗体、そして、それぞれの一次抗体に特異的なAlexa Fluor 488(以下FITC)およびR-Phycoerythrin(以下PE)標識二次抗体を用いて二重染色を行った。蛍光免疫染色を行った酵母株は、FACSを用いて光FITCならびにPEの蛍光強度の高い細胞集団を目的株としてcell sortingを行なった。親株MT8-1III株と、重イオン変異とP4領域の選抜を行なった酵母について、セルラーゼ活性を測定した。その結果、親株MT8-1III株のセルラーゼ活性が1.6×10^<-3>U/OD unitであったのに対し、選抜された酵母集団のセルラーゼ活性は5.2×10^<-3>U/OD unitへ向上していることが分かった。
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