真核生物のミトコンドリアに局在するSuperoxide dismutase (SOD)は酸化ストレスヘの耐性や老化の防止に重要な役割を担っている。本研究の目的は、ミトコンドリアSODのアセチル化の生理的意義や機構を明らかにすることである。本年度はまず、SODのコードする18のリジン残基をグルタミン・アルギニン残基にそれぞれ置換した変異株を作成した。これらの変異酵母株の酸化ストレス耐性を調べたが、野生株に比べて顕著な表現型の変化は見られなかった。Superoxideは呼吸と関連して発生するので、発酵ではなく呼吸によって増殖するグルコース以外の培地での表現型も今後は調べた方がいいかもしれない。またSODはミトコンドリア内でアセチル化されると示唆されているが、ミトコンドリアに局在するアセチル化酵素は知られていない。SODをアセチル化するミトコンドリアの酵素をスクリーニングするために、ミトコンドリアに局在するタンパク質をコードすると知られている約500のORFを過剰発現する分裂酵母株から粗抽出液を調製した。これらの約500の細胞粗抽出液をSODのアセチル化部位を特異的に認識する抗体(本年度に作成した)でハイスループットにウエスタンブロットした。その結果、SODのアセチル化を亢進している株は見つからなかった。原因としては、ORFを過剰発現しても必ずしも発現量は大幅に増加しないことや、アセチル化酵素を過剰発現してもアセチル化レベルは上昇するとは限らないことなどがある。今後は過剰発現株のみならず、遺伝子欠損株ライブラリーもスクリーニングする方が有効であると考えられる。
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