分裂酵母のミトコンドリアに局在するSuperoxide dismutase(SOD)は酸化ストレスへの耐性に重要だが、リジン残基でアセチル化されることも明らかになっている。本研究の目標は、ミトコンドリアSODのアセチル化の生理的意義を明らかにすることおよび、ミトコンドリアタンパク質をアセチル化する酵素や制御機構を分裂酵母のSODをモデル基質として明らかにすることである。 まず第一に、SODのアセチル化部位の変異酵母株の表現型を様々な培地や条件で調べたが顕著な違いは見つからなかった。ただしアセチル化レベルは酸化ストレス下でやや上昇するようであった。アセチル化によるSOD活性の変化は微小であるか、酵素活性以外の制御や調節に関与している可能性がある。もしくは特殊な条件下でのみ顕著な表現型として現れるのかもしれない。 第二に、ミトコンドリアに局在するタンパク質を欠損する数百の分裂酵母株から、SODのアセチル化が減少している株をスクリーニングした。その結果、アミノ酸代謝に関連する二つの遺伝子がSODのin vivoでのアセチル化に重要であった。二つの遺伝子はヒトホモログを持ち、病気にも関連している遺伝子であった。これらの遺伝子のコードするタンパク質がSODのアセチル化反応に直接関与している可能性はあるものの、間接的に作用している可能性もある。例えばミトコンドリアへのアセチルCoAまたはその前駆体の輸送に関連しているかもしれないし、あるいはアミノ酸代謝がグローバルなタンパク質アセチル化に影響する未知の機構が存在するのかもしれない。 このようにミトコンドリアのタンパク質アセチル化とアミノ酸代謝を結ぶ未知の経路が存在することが示唆された。
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