生体には医薬品や環境汚染物質などの生体外異物に対する防御機構が備わっている。生体外異物が侵入すると、これを認識したレセプター型転写調節因子が細胞質から核内へ移行し、標的遺伝子(酸化酵素、抱合酵素、トランスポーターなど)の発現を誘導して代謝・排泄が促進される。Constitutive Androstane Receptor(CAR)は継代培養細胞において生体内とは同じ挙動を示さず、非刺激下においても自発的に核へ移行してしまう。またCARはリガンドの非存在下においても恒常的に活性化状態にあるため、生体内でのCARを介した転写活性化は主に細胞質から核への局在の変化によって調節されていると考えられる。したがって自発的に核へ局在化してしまう培養細胞ではリガンドやアクチベーターによるCARの活性化を評価することができない。そのため現在ではin vivoの実験による評価が主に行われているが、倫理的観点や実験操作の煩雑性から継代培養細胞を用いたCARの活性化の評価系が求められている。そこで本研究は、CARの細胞内局在調節メカニズムを明らかにしCARの活性化のin vitro評価系の確立を目的としている。これまでの研究からCARの自発的核移行には核移行シグナルNLS1もしくはNLS2が必要であることがわかっており、さらにCARを細胞質に保持するのに必要な領域CRRを見出した。アクチベーターによるCARの核移行に微小管ネットワークが必要であることを見出した。さらにCRRがCARの膜への移行及び保持に重要な役割を担っていることを示唆する結果を得ている。これらのCARの活性化メカニズムを明らかにすることは、培養細胞でのCARの活性化を評価する実験系の確立するために重要である。また、CARのリガンド結合領域を変異させた変異体を用いたCARのリガンドスクリーニングアッセイ系を確立した。CARのリガンドの検索は、CARを介した薬物相互作用の予測を行う上で重要であると考えられる。
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