研究概要 |
組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の脳梗塞治療開始遅延による脳出血の危険性を回避できれば、治療有効時間が延長でき、より多くの患者を救命することができる。 マウス脳梗塞疾患モデルにおけるエバンスブルー法による脳への漏出について観察したところ、虚血開始4時間後のtPA投与は、虚血開始6時間後(tPA投与2時間後)のエバンスブルーの漏出を一過性に増加させることが判明した。そこで、LDL受容体ファミリーのうちLRP-1に着目してマウス脳梗塞疾患モデルにおけるその分布を確認した。正常状態では、神経細胞に多く発現していることが形態学的な検討から判明した。そして、虚血状態にすると24時間後の脳切片の解析より内皮細胞にも誘導されることが判明した。 脳血管内皮細胞での初代培養を取り組んだが、未だに確立できていない。市販の不死化細胞であるマウス脳微小血管内皮細胞b. End3(ATCC, USA)を用いて検討を行ったところ、この細胞において免疫染色を用いた形態学的な解析では、継代後10日前後においてLRP-1が発現していることを確認した。それは免疫沈降とウエスタンブロッティング法ではほとんど検出できない程度であった。さらに、6時間の虚血(低酸素・低グルコース)状態にするとLRP-1が誘導されることが判明した。 今までの我々の報告した虚血開始4時間後のtPA投与によって内皮細胞にストラムライシン-1(MMP-3)が誘導されることと今回の結果であるLRP-1が虚血によって内皮細胞に誘導されることから、tPA/LRP-1/MMP-3の三者が虚血下内皮細胞で重要な関係があるのではないかと推察される。
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