研究概要 |
組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の脳梗塞治療開始遅延による脳出血の危険性を回避できれば、治療有効時間が延長でき、より多くの患者を救命することができる。脳血管内皮細胞での初代培養を取り組んでいるが、未だに確立できていない。市販の不死化細胞であるマウス脳微小血管内皮細胞b.End3(ATCC,USA)を用いて検討を行ったところ、この細胞においてLRP-1がmRNAレベルでも6時間の虚血刺激(低酸素・低グルコース)によって誘導されていることが判明した。また、虚血刺激とt-PA刺激の相加反応による24時間におけるストラムライシン-1(MMP-3)の放出が、LRP-1の阻害薬であるRAPおよび抗LRP-1抗体を前処置するとt-PA刺激に相当するMMP-3の放出分が抑制された。さらに、t-PAのセリンプロテアーゼとしての酵素活性を不活性化し添加するとt-PA刺激分のMMP-3が誘導されなかった。転写因子であるNF-κBに着目し、核内のNF-κBの移行量を測定したところ、虚血刺激によって増大し、さらにt-PA刺激によって相加反応が認められた。LRP-1の阻害薬によってt-PA刺激分が抑制された。LRP-1が虚血によって内皮細胞に誘導され、t-PAと結合してNF-κBを活性化することでMMP-3の産生を誘導していることが示された。これらのことから、tPA/LRP-1/NF-kB/MMP-3経路が虚血下内皮細胞で重要な関係があり、t-PAによる脳血管障害の重要な経路ではないかと推察される。
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