研究概要 |
組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の脳梗塞治療開始遅延による脳出血の危険性を回避できれば、治療有効時間が延長でき、より多くの患者を救命することができる。虚血下内皮細胞におけるt-PA、LDL related-protein 1 (LRP-1),転写因子NF-κB、ストラムライシン-1(MMP-3)が重要な因子であり、これらの関係がt-PA治療による脳血管障害の重要な経路であることを見出した。マウス脳微小血管内皮細胞b.End3(ATCC,USA)を用いて虚血刺激(低酸素・低グルコース)とt-PA添加によって炎症に関係する因子がmRNAレベルで変化していること見出した。現在、虚血刺激とt-PA刺激が相乗反応となる因子を探索している。 これまでの中大脳動脈閉塞モデルを遺伝子改変動物に適応するとその傷害による一次的な脳梗塞の違いから、続く病態生理学的な反応に影響を与え、遺伝子改変した因子による病態生理学的な反応に言及することが困難であった。例えば、t-PA遺伝子欠損マウスは中大脳動脈永久閉塞モデルにおいて脳梗塞が野生型に比して縮小することを我々は報告している。そこで、脳梗塞の大きさを一定した動物病態モデルの確立を行った。色素であるローズベンガルと540nmの緑色光の光化学的な反応を利用してモデルの開発を行い、様々な系統のマウスを調べたところ、系統に因らず一定の大きさの脳梗塞を作成することができた。また、光量を調節することによって与える脳梗塞の大きさを調節することができた。現在、t-PA遺伝子欠損マウスに適用し脳血管障害における病態生理学的な変化および行動薬理学的な変化を検討中である。今後、この動物モデルを用いて線溶因子あるいはMMPs遺伝子欠損動物に適用して脳血管障害の修復に関わるプロセスを解明していく予定である。
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