がん増殖を促進するマクロファージ(腫瘍関連マクロファージ、TAMs)の葉酸受容体βFRβの発現をがん組織にて検討し、このマクロファージを標的とした抗FRβマウスモノクローナル抗体ベースの低分子高機能型抗体(遺伝子改変型緑膿菌毒素PE38ベースのイムノトキシン)を作製すると共に、動物モデルにてその効果を検討した。(1)ヒトがん組織におけるTAMsのFRβ発現を免疫組織化学染色にて行ったところ、FRβ発現TAMsは脳腫瘍、肺がん、膵臓がんの腫瘍と間質の境界に集簇を形成して局在した。さらに、FRβ発現TAMsの高局在性は、がんの悪性度と相関を示した(正常組織では低局在もしくは存在しない(。(2)次に、ラットC6グリオーマ・ヌードマウス皮下移植モデルおよびマウス肺がんモデルにてFRβ発現TAMsの局在を検討したところ、ヒトがん組織と同様に集簇を形成してがん間質や血管新生領域に局在する事が確認された。(3)FRβ陽性マクロファージの選択的除去を目的とした低分子高機能型抗体(イムノトキシン)を作製し、(2)のモデルに投与したところ、腫瘍血管新生の抑制を伴ったがん増殖の抑制が確認された。(4)イムノトキシンはFRβ陽性マクロファージが分泌するVEGFやNO産生を抑制した。以上のことから、FRβを発現する腫瘍関連マクロファージは、がんの増殖に促進的に関与し、その選択的除去ががん治療に有効であることが示唆された。
|