ゾル・ゲル法は、様々な特徴を持った機能性固体酸化物の合成できることから、固体酸化物材料の合成における有力な手法一つである。しかし、ゾル・ゲル法における典型的なナノ構造の制御手法である逆ミセルや金属錯体微結晶等を用いたテンプレート合成は、極めて容易に加水分解を起こすアルミニウムやチタン等の金属アルコキシドに対する適用が困難である。この問題点を克服し、様々な金属酸化物に適用可能なナノオーダーの構造制御手法を開発するために、研究代表者はゾル・ゲル法を発展させた、非水溶媒中での新規な固体酸化物材料の合成を検討した。 研究代表者は、極性が署しく異なり、通常では混和しないn-ヘキサンとエチレングリコールモノメチルエーテル(EGME)という二種類の有機溶媒中に、界面活性剤であるビス(2-エチルヘキシル)スルポコハク酸ナトリウム(AOT)を加えることで、非水溶媒中における逆ミセル類似微小反応場を形成することに成功した。また、ミセル中のEGME相には塩化イリジウム酸、塩化白金酸などの各種貴金属前駆体が導入可能であることを確認した。これらの貴金属含有ミセル溶液中にチタンテトライソプロポキシドを加えたところ、ミセル内部において酸化物の形成が進行した結果、真球状のミセル形状を反映した貴金属担持チタニアナノ粒子が得られた。一方、四塩化ケイ素もしくは四塩化チタンを同様のミセル溶液中に加えたところ、高い加水分解速度を有するこれらの塩化物がミセル外周で加水分解して酸化物を生成した結果、サイズの均一な球状の空孔を有する新規なメソポーラスシリカもしくはチタニアが得られた。このように非水溶媒中の逆ミセル類似微小反応場の適用により、サイズの均一な真球状チタニアや、球状の空孔を有するメソポーラスシリカ、チタニアの作り分けに成功し、新たな酸化物材料のナノオーダー構造制御手法を創出することに成功した。
|