研究概要 |
研究代表者は、平成20年度の研究において、非水溶媒中に形成した逆ミセル類似微小反応場を用いてサイズの均一な真球状チタニアや、球状の空孔を有するメソポーラスシリカを調製することに成功し、新たな酸化物材料のナノオーダー構造制御手法を創出した。この際、逆ミセル類似反応場の高極性溶媒中に貴金属前駆体を導入可能であり、本法を用いて各種貴金属を含有したナノ粒子が調製できる可能性を見出した。平成21年度は、上記の知見に基づき、貴金属前駆体の存在下でチタニア及びメソポーラスシリカの調製を行い、これらの材料のTEM/EDXと化学吸着量測定によるキャラクタリゼーションを行った。 貴金属前駆体として塩化イリジウム酸を用いて調製した球状チタニアナノ粒子とメソポーラスシリカについてTEM/EDX測定を行ったところ、球状チタニアナノ粒子からは導入した塩化イリジウム酸とほぼ同量の5wt%のイリジウム原子の存在が観測されたのに対し、メソポーラスシリカからはイリジウム原子はほとんど検出されなかった。これは、球状チタニアナノ粒子の形成時には、ミセル内部液であるEGME相でチタニア源の加水分解が起こるため、同じくEGME相に含有される貴金属源がチタニアナノ粒子内に分散するのに対し、メソポーラスシリカの生成時には、シリカ源がミセル外部液に溶解しておりミセル内部液と外部液の界面で加水分解が起こるため、ミセル内部液中の貴金属源がシリカ中に残存しないためと考えられる。ナノ粒子中にイリジウムの存在が確認されたチタニアナノ粒子について、水素及び一酸化炭素の化学吸着量を測定したところ、いずれもほとんど吸着しなかった(H/Ir,CO/Ir>0.1)。TEM観測でイリジウム粒子の凝集が観測されないことから、イリジウムが気体の透過性に乏しい激緻密なチタニア中に分散しているため、低い化学吸着量しか示さなかったものと推測される。今後、本法で調製したナノ粒子を種々の触媒反応に適用するために、細孔の導入について検討する。
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