研究課題
本研究の目的は、1980年代以降の米国における教師の知識と学習過程の理論の到達点と課題を明らかにすることであり、そのため、アメリカにおける教師スタンダード構築に理論的基盤を与えたショーマン(Shulman)の理論を検討した。その結果、次の点が明らかになった。第一に、ショーマンは、教師の知識は学習過程と切り離して考えることはできないと考え、専門職としての教師の学習過程の分析から、それを支える知識のあり方を探究してきた点である。第二に、教育実践の中で使用されるように翻案された知識を成文化し共有することに取り組んできた点である。しかしながら第三に、理論的思索を深めていく中で、教師に特有な知識を精選し明確にするというよりも、教師に特有な知識をより広い世界に公的に開いていくことに意味があると考えるようになった点である。以上から、教師の自律的な力量形成のあり方に関する示唆を示す。現在世界的に、教師スタンダードは、教師にのみ必要であり到達すべき知識・能力を列挙し、それを下位項目へと分析するという手法を取っている。ショーマンによるとこのような手法は、結果的に直線的な学習過程を導く。目標分析を学習過程の分析とともに行い、その際、学習過程を公的で共同的なものとしてモデル化とすることで、学習者は単に分析された知識・能力を保障される客体ではなく、教職という専門職共同体に参加するなかで自身の知識・能力を表明する主体となることができる。また、教師の知識と学習過程を他の専門職も理解可能なように開くことは、教育実践に関する議論により多くの参加を促す。
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教育方法学研究 35
ページ: 71-81
教師に必要な能力の定義・選択とその記述・評価の方法に関する研究―福井大学「教員養成スタンダード」の策定に向けて― (践的な教師教育研究拠点の基盤形成平成21年度福井大学教育地域科学部学部重点研究 研究成果報告書 研究代表者 八田幸恵)
ページ: 1-11