研究概要 |
まず,「真正の評価(authentic assessment)」に向けた取り組みの事例として,米国エッセンシャル・スクール連盟(Coalition of Essential Schools)加盟校の実践に注目し,そこで「真正の評価」と呼ばれる取り組みが実践の中でどのような役割を果たしているのかという視点で検討を続けた。この事例研究の中で明らかにしたこととして,学校に埋め込まれている評価システムが学校内外の協働を促す装置に成り得ているかという点は,今後の日本の教育実践研究を考える上でも重要な論点となる。 次に,教育実践に内在している評価理論を検討するための素材として,本研究では実践者自身が書く実践記録に注目した。例えば福井大学教育地域科学部附属中学校には,教師が実践記録を執筆する中で自分の実践を省察し,その実践記録を同僚教師と検討し書き直す中で新たな実践を展望するサイクルが校内研究として明確に位置付いている。それは同校のカリキュラム評価の重要な装置となっており,まず実践記録の叙述構造から,同校の実践に内在している評価の構造を読み解くことができる。本年度は同校の教師と協働で過去5年間の実践記録を検討する中で,実践記録に表れない評価の構造にも目を向けた研究方法を見出すことができた。 さらに,学力調査の受け止め方に見られる評価構造を検討するための基礎作業として,本年度はOECDの能力観に注目した。具体的には,DeSeCoの「キー・コンピテンシー」やコンピテンス概念を手がかりに,実践の背後にある能力観・評価観を検討するための新たな視点を明らかにした。
|