「介護福祉士(ケアワーカー)」は、高齢社会の伸展する中での「社会化された介護」の担い手として1987 年に福祉職の専門職として国家資格化された。しかし、介護現場は給与の低さや労働環境等により介護福祉士を含む介護職の離職率は高く日常的な人手不足に陥っている。それが更に労働環境を悪化させるという悪循環に陥っている。なぜ、このような状態になっているのであろうか。背景の一つには、構造的な問題がある。ケアという包括概念を含むケアワークの本質的な第一義的機能は「日常生活の援助」であり、これは看護と同様のものである。国際的にみてもケアワーカーという職は、看護領域に位置付けられている。更に、ドイツを除く多くの国は、非熟練・底辺労働として看護領域の最下層に位置づけられている。日本のみが、福祉の専門職としているのであるが、福祉領域では専門職であるのに医療領域においては看護助手と同等の無資格者という矛盾した制度となっている。医療費抑制政策の一環として医療制度を再編し、看護師不足の解消を看護師よりより安い労働力で補おうとした政策的意図が窺われる。そしてこのことが、資格化における構造的問題点であり、資格化における本質的問題であるといえる。 二つ目は、ケアワークに対する社会的評価の低さである。ケアワークとは、連続的な生命・生活の援助活動である。広義の意での「家事」である。これらの社会化された生活(家事)を担う者をケアワーカーと捉えることができる。有史以来、家事は生命の再生産労働として家庭内でおこなわれており、近代国家以来社会的な性差での役割分担に沿って主に女性が担ってきた分業であったため、職業化されても社会的な再生産労働として底辺に位置付けられている。ケアワークの諸問題は、ジェンダーや女性労働問題とも深く関係している。ケアワーク(介護)は、対象となる方の気持ちをくみ取りながら生活意欲を引き出し、生活能力の維持・回復・向上を目指した援助を組み立て、援助実践していくことが求められる。プライベートなその人の生活に入り込み、人生にも関っていくのである。その関わりを通して信頼関係を築きながら、共に考え話し合い、継続的・重複的に見通しを立てながら進めていくことが求められる。洞察力、判断力、問題解決力等が求められる知的労働である。一人ひとりの関わりとその場面でのやりとりが、直接、本人とその家族の生命・生活に直結している。つまり、ケアワーカーその個人の質が問われる仕事であり、専門性が必要とされる仕事であると言える。
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