平成21年度は、政策評価又は行政評価の結果を予算編成に反映させようとする業績予算について、特に福岡県内の自治体の事例の検討を行った。研究を行うにあたっては、行政学的な観点、具体的には(1)管理として組織運営の効率化を代表とする経営管理の視点、(2)制度として条例を含む法制度の視点、(3)政策として政策過程の視点から検討を行い、その導入がもたらす行政組織への影響を分析した。 福岡県内の事例として本年度に分析対象としたのが、大牟田市、大野城市、及び筑紫野市である。それぞれの地方自治体の行政評価担当部署を訪れ、インタビュー調査を行った。その中で、福岡県南部に位置する大牟田市は三重県の事務事業評価をモデルとした行政評価制度を既に導入している。大牟田市の評価制度は、市役所の各部局の次年度計画の策定、予算編成、及び行政評価のそれぞれが連携することを目指している。大野城市についても、「公共サービスDOCK事業」として、行政評価、業務改善、及び予算編成を連携させるシステム作りが進んでいる。大牟田市に隣接する「みやま市」では行政評価制度が平成21年度に試行的に導入されたところであり、「みやま市」の事例とその他の地方自治体の事例を比較検討した。 研究成果としては、欧米における業績予算の理論と事例についてのOECD(経済協力開発機構)の報告書の日本語版を、共訳で刊行した。我が国の業績予算を検討する際には、このOECDの報告書が示した理論及び先行事例は参考になるだろう。また、昨年度から研究を進めていた米国連邦政府の業績予算であるPART(Program Assessment Rating Tool)について学術雑誌に論文を公表し、制度の特徴と実際の運用を明らかにした(論文の(下)は、平成22年6月に公刊される予定である。)。
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