研究課題/領域番号 |
20H00184
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大竹 翼 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80544105)
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研究分担者 |
石田 章純 東北大学, 理学研究科, 助教 (10633638)
杉谷 健一郎 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (20222052)
AGANGI ANDREA 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (20840812)
掛川 武 東北大学, 理学研究科, 教授 (60250669)
大友 陽子 北海道大学, 工学研究院, 特任助教 (80612902)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 科学掘削 / 縞状鉄鉱層 / 光合成 / 地球表層環境 / 安定同位体 |
研究実績の概要 |
R3年度はR2年度に現地での新型コロナ感染拡大のため遅れていた科学掘削が開始された。バーバトン地域の4サイト(site 2, 3, 4, 5)において合計7本のコアを掘削した。これらの掘削コアは、当時の海洋環境に関する情報を保持していると考えられる化学堆積岩(縞状鉄鉱層: BIF, ジャスパー)や沿岸域の生態系に関する情報を保存している可能性がある浅海性堆積岩を含んでいる。現地のコア記載も進んでいる。またすでに露頭や稼行中の鉱山で採取済みの岩石試料を使用して分析手法の確立に取り組んだ。鉄 (Fe) およびクロム (Cr) 安定同位体比の分析についてはBIF試料において良好に単離などの前処理を行うことができ、分析条件を確立することができた。Fe同位体比については十数試料の分析が完了しており、その値から海洋からの化学沈澱のシグナルを保持していることが明らかとなった。その同位体変動幅は鉄の酸化沈澱でのみ説明可能であり、32億年まえの浅海域で海洋中の溶存二価鉄が酸化されるプロセスがすでに存在していたと考えられる。また、有機物を抽出して微細構造分析を行ったところフィルム状の有機物を検出し、比較的未熟成であることも明らかとなった。さらにその有機物に含まれている窒素(N)の同位体比を測定したところ、誤差は大きかったが酸素発生光合成細菌の寄与を示唆する同位体的に重たい値を示した。ヨハネスブルグ大学におけるLA-ICP-MSによるジルコンの分析についても条件などを確立し、分析環境を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染拡大のためR2年度は掘削を行うことができなかった。そのため、R3年度は掘削コアの化学分析を行うことができなかった。しかしながら、R3年度に掘削は開始され、順調にコアが回収されたため当初予定されていた掘削計画のスケジュールに戻りつつある。掘削されたコアを現地で記載することはできなかったが、現地の共同研究者により記載され情報は共有できている。R3年度はこれまでに採取していた岩石試料の各種分析を行い、前処理法や分析条件を確立することができた。特にFe同位体では対象地層中の化学堆積岩が海洋から沈殿した当時のシグナルを保存していることが明らかとなり、掘削コアの試料から当時の地球表層環境や生物活動について有用な情報が得られることを担保することができた。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は現地に赴き掘削周辺地域の地質調査を行うとともに、掘削されたコアと共同研究者による岩石記載を確認し、ターゲットとなる化学堆積岩や有機物に富む堆積岩試料の分割・採取を行う。採取した試料はヨハネスブルグ大学で分析を行うほか、日本へ輸送し、R3年度に確立した分析条件にて分析を行う。またこれまでに採取済みの岩石試料にて分析したデータは論文原稿を用意し随時発表していく。
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